医療者の方へ For Medical

全国の緩和医療科/緩和ケアチームの先生方、
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臨床研究の名称

オピオイド不応性がん関連神経障害性疼痛を対象に
14日間のデュロキセチンの有効性および安全性を
プレガバリンと比較する
国際多施設共同二重盲検用量漸増 第III相ランダム化比較試験

International, multi-centre, double-blind, dose increment, parallel-arm, randomised controlled of duloxetine versus pregabalin over 14 days for opioid unresponsive cancer-related neuropathic pain


背 景

がん疼痛を有する患者のうち33%が神経障害性疼痛(Neuropathic Pain: NP)を有している。神経障害性疼痛は難治性でオピオイドへの反応性も良くない。このため鎮痛補助薬(本来は痛みの治療薬として開発された薬剤ではないが、痛みの治療に用いられる薬剤の総称。例.抗うつ薬や抗痙攣薬など)を使用することが多い。中でもガバペンチノイド(ガバペンチン、プレガバリン)抗痙攣薬の有効性が2つのRCTで示されており、みなし標準治療として考えられている。デュロキセチンはセロトニンとノルアドレナリンの両者にバランスよく強力に再取り込みを阻害する抗うつ薬(Serotonin Noradrenalin Reuptake Inhibitor: SNRI)で、オピオイドに反応性の悪いがん由来の神経障害性疼痛(Cancer-related Neuropathic Pain: CNP)の疼痛軽減に可能性のある薬剤である。しかし、初回治療としてのデュロキセチンの有用性を示した研究は過去にない。両薬剤(ガバペンチノイド、デュロキセチン)ともにCNPへの有効性が示唆されているが、実際の臨床的な効果/副作用を直接比較した研究はない。最新のWHOガイドラインでも、鎮痛補助薬の使用に関しては、臨床試験の実施が推奨されている。CNPを対象として、デュロキセチンの効果をみた研究は、これまでにほとんど存在しないが、我々の研究グループでは、オピオイドとガバペンチノイド治療に反応しないCNPに対して、2次治療としてのデュロキセチンの上乗せ効果をみたプラセボ対照ランダム化比較試験を実施し、NNT(ある介入を対象者に実施した場合、1人に効果が現れるまでに何人の治療が必要であるかを表す数字:少ないほど良好な薬剤である)=3.4(三環系抗うつ薬と同等。通常の鎮痛補助薬は7-8程度である)と良好な結果を示している。また、2015年のThe Lancet Neurologyによると、非がんの神経障害性疼痛に対するNNTはデュロキセチンがガバペンチノイド(プレガバリンやガバペンチン)よりも優れていた。


目 的

プレガバリンとデュロキセチンの二重盲検無作為化比較試験により、オピオイド不応性CNPの薬理学的治療のエビデンスを高めること

主要な目的
治療前 24 時間の最悪の疼痛強度 4 以上および LANSS スケール(LANSS)12 以上の CNP に対して、デュロキセチンの正味の臨床効果(有益および害)の差異をプレガバリンと比較する。



対 象

がん由来の神経障害性疼痛
Cancer-related Neuropathic Pain: CNP


主たる選択基準

がんおよび神経障害性疼痛の診断がつく入院患者および外来患者
18歳以上(日本は20歳以上)
KPS 50以上
研究の評価項目を完了することが可能で、試験手順に従うことができる
情報に基づく書面による同意を提供する能力
過去24時間のBPI項目3(最悪疼痛強度)スコアが4以上のがんに関連する疼痛
LANSS 12以上 の神経障害性疼痛
適切な用量(最大許容用量までのタイトレーションまたは、特に禁忌でない限りは、最低60mg/日の経口モルヒネ換算相当用量を投与されている事と定義する)のオピオイド薬が投与されている
定期鎮痛薬(オピオイド、パラセタモール、非ステロイド性抗炎症薬)および全ての鎮痛補助薬(抗うつ薬、抗痙攣薬、抗不整脈薬、N-メチル-D-アスパラギン酸受容体拮抗薬、ステロイドなど)が、研究を開始する72時間前までに安定していること


主たる除外基準

化学療法誘発末梢神経障害
脊髄圧迫
デュロキセチンまたはプレガバリンの禁忌
2週間以内に何らかの理由でガバペンチノイドまたはデュロキセチンを服用している。
何らかの理由でSSRIまたはSNRIを内服している。
登録4週間前に新しい抗がん剤の臨床試験に参加した参加者
研究結果の信頼性に影響を与える臨床的に有意な認知障害を有する患者
最近の薬物乱用の病歴を有する患者
妊娠中、授乳中、または妊娠している可能性のある患者
研究者が研究に参加することが不適切であると判断した患者
ベースラインの14日以内に新規化学療法が開始された患者
腎不全の患者
肝不全の患者

試験デザイン



評価項目

主たる評価項目 Primary Outcome

Day14の最悪の疼痛強度(BPI項目3)の比較



副次的な評価項目 Secondary Outcome

14日目および21日目の平均疼痛強度(BPI項目5)
21日目の最悪の疼痛強度(BPI項目3)
Short form McGill Pain Questionnaire 2(SF-MPQ-2スコア)
EORTC QLQ-C15-PAL
HADS
毎日のオピオイド投与量(それぞれの日)
毒性評価(NCI CTCAE;悪心、軽度、眠気、浮腫/PRO CTCAE)
Day3、7、14でのベースラインからBPI項目3が、1ポイント、2ポイント、2ポイント以上の減少、また30%と50%以上の痛みの軽減が得られた参加者の割合
最大用量まで増加できた参加者の割合
各段階で痛みをコントロールできる参加者の割合
個人的な痛みの目標を達成できる参加者の割合
ベースラインのオピオイドと鎮痛補助薬を調整する必要のある参加者の割合
試験完遂率
鎮痛補助薬の合計使用量(それぞれの日)
介入(毒性)との関係の可能性のある有害事象を、前向きに探求する。
保健サービス利用-予定、予定外の受診、調査、入院

用いる医薬品等の概要

●デュロキセチン

販売名

サインバルタカプセル®(塩野義/日本イーライリリー) 30mg

●プレガバリン

販売名

リリカ®(ファイザー/エーザイ)25㎎,75㎎

研究組織

研究課題名 オピオイド不応性がん関連神経障害性疼痛を対象に14日間のデュロキセチンの有効性および安全性をプレガバリンと比較する国際多施設共同二重盲検用量漸増 第III相ランダム化比較試験
研究責任者
/研究事務局
松岡 弘道
国立がん研究センター中央病院
緩和ケアチーム / 精神腫瘍科 科長
研究参加施設
  • ・国立がん研究センター中央病院
  • ・国立がん研究センター東病院
  • ・筑波大学 医学医療系
  • ・東北大学大学院 医学系研究科 緩和医療学分野
  • ・国立病院機構近畿中央呼吸器センター
  • ・近畿大学医学部 内科学教室 心療内科部門
  • ・関西医科大学附属病院
  • ・St Vincent's Hospital / Sacred Heart Health Service(Sydney)
  • ・Liverpool Hospital(Sydney)
  • ・Royal Melbourne Hospital / Peter MacCallum Cancer Centre(Melbourne)
  • ・Mater Hospital(Brisbane)
研究分担医師
  • 関東甲信越
  • 国立がん研究センター中央病院
    ・松岡 弘道(緩和ケアチーム / 精神腫瘍科 科長)
    ・里見 絵理子(緩和ケアチーム / 緩和医療科 科長)
    ・石木 寛人(緩和ケアチーム / 緩和医療科 医長)
  • 国立がん研究センター東病院
    ・松本 禎久(緩和医療科 科長)
  • 埼玉医科大学 緩和医療科
    ・岩瀬  哲(教授)
  • 筑波大学 医学医療系
    ・長岡 広香(講師)
  • 東 北
  • 東北大学大学院 医学系研究科 緩和医療学分野
    ・井上  彰(教授)
  • 近 畿
  • 国立病院機構近畿中央呼吸器センター
    ・所  昭宏(心療内科 科長)
    ・松田 能宣(心療内科 医長)
  • 近畿大学医学部 内科学教室 心療内科部門
    ・小山 敦子(教授)
    ・酒井 清裕(医学部講師)
    ・阪本  亮(助教)
    ・名倉 美樹(助教)
  • 関西医科大学附属病院
    ・蓮尾 英明(心療内科 講師)
  • 海 外 *オーストラリア
  • St Vincent's Hospital / Sacred Heart Health Service(Sydney)
    ・Prof. Richard Chye
  • Liverpool Hospital(Sydney)
    ・Prof. Meera Agar
  • Royal Melbourne Hospital / Peter MacCallum Cancer Centre(Melbourne)
    ・Prof Brian Le
  • Mater Hospital(Brisbane)
    ・Prof Phillip Good
共同研究者
  • 国立がん研究センター中央病院 緩和医療科
    ・天野 晃滋(緩和医療科 医員)
    ・木内 大佑(緩和医療科 医員)
    ・小林 智美(緩和医療科 特任研究補助員)
    ・三井 明子(精神腫瘍科 特任研究補助員)
  • 国立がん研究センター東病院 緩和医療科
    ・三浦 智史(医長)
    ・小杉 和博(医員)
  • 東北大学大学院 医学系研究科
    ・山口 拓洋(医学統計学 教授)
    ・田上 恵太(緩和医療学分野 講師)
  • 東京大学大学院 医学系研究科
    ・宮路 天平(臨床試験データ管理学講座 特任助教)
  • 東京大学医科学研究所附属病院
    ・藤原 紀子(コーディネーター)
  • 筑波大学
    ・濵野  淳(医学医療系 講師)
    ・東端 孝博(医学部附属病院 緩和ケアセンター 助教)
データ
センター
NPO法人JORTC データセンター
〒116-0013 東京都荒川区西日暮里2-54-6-302
TEL: 03-5604-9850



[最終更新日]2021年 3月 8日